PI Systemを利用したデータインフラの構築(生産設備のデータ収集・保存)

データインフラ

はじめに

工場におけるデータ活用を進めていく上で、まずは各生産設備からデータを収集・保存する必要があります。本記事ではデータヒストリアンとしてOSI PI社のPI Systemを利用したデータインフラの構築について共有したいと思います。

PI Systemとは

PI Systemはアメリカに本社を置くOSIsoft社(現在はAVEVAが提供しています)が開発・販売するデータインフラ基盤パッケージです。PI Systemは、現場の大量のオペレーショナルデータをリアルタイムに一元管理(収集・蓄積・管理・表示・分析)できる高い汎用性を備えたソフトウェアで、製薬業界を含めて業種を超え、世界の各所で導入されているグローバルパッケージになります。

システム構成・特徴

PI Systemの特徴及び基本的なシステム構成は以下となります。

  • 幅広い規格の設備・センサーと接続ができ、データ収集ができる。
  • 収集した時系列データは圧縮され、データベースに格納・保存される。
  • データベース内のデータ管理・アセット化が容易にできる。
  • データの演算やデータ出力、Webブラウザベースでのデータ可視化ができる。
  • 外部システムでのデータ活用ができる。

生産現場における課題とデータヒストリアンの適用

生産現場における課題

生産現場でデータを活用していく為に障害となる主な課題を挙げます。これらはデータヒストリアンを導入することで解決することが可能です。

  • データは各生産機器・システムに点在している。
  • データ形式は各生産機器・システムによって異なる。
  • 製薬業界の電子データの規制要件において、データバックアップ・アーカイブなどの要件に対応が難しい。

このような状態でデータを活用していくとなるとデータ収集や整理の段階で、人の介在が常に発生し、本来の目的であるデータを“活用する”という観点で工数が十分に確保できない状況に陥ることになります。

データヒストリアン(PI System)適用例

データヒストリアンの適用前後のコンセプトは以下になります。データヒストリアンを導入することで、各システムや生産機器に点在していたデータを一元管理ができ、またその後にデータを活用してMESなどで帳票を作成したり、設備稼働状況のリモート監視、予兆保全などを目的とした分析をおこなう際に必要なデータへのアクセスが容易になります。さらに製薬業界の電子データに対する要件(データインテグリティ)に対応していくことにもつながります。

導入に際して検討・考慮が必要なこと

システム導入時にはリスクを検討することになりますが、特に注意が必要な点を共有します。このほか、導入の環境・利用方法によってさらなる注意・配慮事項がありますが、今回は割愛します。

  • PI Systemの信頼性の担保:PI Systemが停止するとデータ収集ができず、生産活動が継続できない状況が考えられます。そのため、各サーバの冗長化なども検討する必要があります。さらにハードウェア面の故障やOSのパッチ適用時の停止なども考慮して計画を立てる必要があります。
  • PI System内でのデータ管理のルールを定める:PI System内でのタグやアセット命名規則など実際に運用を開始した後、データ利用時や追加時に後戻り作業が発生しないように検討しておく必要があります。
  • 接続するデータの取りまとめ・確認が必要:接続するデータのタグリストが必要になりますが、メーカーや担当者によって異なるタグリストのフォーマットが利用されていること、変更時に適切に更新されておらず最新版ではない、そもそも情報が不足しているなど問題が発生しやすい点になります。
  • セキュリティ面への配慮:容易に外部または内部からアクセスできないようセキュリティ面は配慮が必要です。

実際の導入の流れ

導入のざっくりした流れを共有します。実際の導入時では、本番環境・テスト環境のふたつの環境を用意することを推奨します。そのため、テスト環境から本番環境への移行や、製薬業界においてはコンピュータ化システムバリデーションを含む各種ドキュメント化やクオリフィケーション活動が必要になります。

  1. 接続する機器・システムやデータの特定・データリストの作成する
  2. データリストよりPI Systemのタグライセンス数を特定・その他条件を含めてライセンス契約する
  3. サーバ構成・ネットワーク構成を検討する
  4. サーバやネットワーク機器の発注・現地へのインストールと構成設定
  5. PI System内タグやアセット設定の検討
  6. PI Systemのインストール・構成設定
  7. PI Interfaceと機器・システムの接続・データ接続
  8. 外部システムとの連携
  9. テスト
  10. メンテナンス計画とともに運用開始

最後に

今回はデータヒストリアンとしてPI Systemを利用したデータインフラの構築について共有しました。本記事に関する感想や気になる点などコメントして頂けましたら幸いです。

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